いきものがたり

我が家の住人たちや趣味などを書いています。

50年も掛かってしまったね【後編】

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時間というのは残酷なのか慈愛なのか、

ドラゴを失った悲しみは徐々に癒えていった。

だが、決して自責の念だけは消えることはなかった。

 

ボクは結婚して3人の子どもに恵まれた。

長男が小学4年生のころ、あるおねだりをしてきた。

 

犬を飼いたい。

 

ボクはビクッとした。

ボクには犬を飼う資格がない。当然だ。

でもボクというヤツは本当に身勝手な人間だ。

もう一度チャンスが欲しいと思った。

 

ドラゴ、許してくれるかい?

 

ボクの問いかけは空へ吸い込まれていった。 

 

 

 

ボクは息子と一緒にペットショップへ来ていた。

今日は見るだけだと約束し、かわいい子犬を見てまわった。

 

どうやら息子は気になる子を見つけたようだった。

 

お?血統書付きなのか。ちょっと見せてもらおう。

 

え!?父がドラゴ!?

もちろんあのドラゴではない。そんなことは分かっている。

でもボクは店員さんに言っていた。

 

この子を家族にしたいです。

 

 

新しく家族に加わった子の名前は「ボル」に決まった。

子どもたちは本当によくボルの面倒を見てくれた。

愛情をいっぱい受けてボルはすくすくと育った。

 

ボクもドラゴにしてやれなかった分以上に愛情を注いだ。

そうすることで許されたかったのかも知れない。

だが、自責の念が消えることはなかった。

ドラゴはドラゴ、ボルはボルなのだ。当たり前のことだった。

 

ボルを加えた幸せな時間はあっという間に過ぎ、

ボクは60歳、ボルは17歳になっていた。

もう2人ともおじいさんだ。

 

いつものように2人で散歩に繰り出す。

ボルは足が弱ってきており、ヨロヨロしながらついてきていた。

ボクはちょいちょい振り返りボルを確認しながら歩いていた。

もう新鮮味なんてこれっぽっちもない。でもとっても幸せだ。

 

「幸せだなぁボル」と声をかけようと振り向いたとき、

ボルは足がもつれて車道の方へよろけてしまっていた。

 

あぶない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボクは仰向けで倒れていた。車道で。

 

なんだか右頬が生暖かい感触がする。

ボルが心配そうにペロペロ舐めていた。

 

あぁ、ボル、、、無事だったんだね、、、よかった、、、、

 

そのまま目の前が真っ暗になった。

が、ボルの遠吠えは最後まではっきり聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今ボクはお空にいる。そして隣には愛犬。

「50年も掛かってしまったね。また一緒に暮らしてくれるかい?」

「ワン!」

 

ドラゴは満面の笑みを浮かべながら尻尾を振ってくれた。

 

 

ー 完 ー